2010
06.17

フライトの誘惑

言いたい放題

昔は嫌いだった。

あの長いフライトの時間が退屈で仕方なかった。

 

ハイテクの機内に和室の尺度を用いるのは不自然かと思うが他に例えが思い浮かばないので。

 

たとえばビジネスクラスの席だったとしても所詮、畳にして半畳ほどのスペース。

フルフラットにできるスーパーシートにしたってせいぜい1畳ぼどもない狭い空間に、関空からデンパサールまで約7時間もの長い間ほとんど缶詰状態に置かれる。

 

これは日常の生活ではほとんど有り得ないことだと思える。

逆にだからこそ、そういう体験ができる、いやそうするしかないフライトでの状況を、最近では楽しめるようになってきている。

 

これは他ならぬ自分が持ち込んだ遊び道具であり、また機内に備えられたDVD機器のおかげである。

そうこんなに長い時間お気に入りのアイテムをじっくり楽しめる機会はそうザラには有り得ない。

もはやこの7時間のフライトだけが唯一ではないかとは言い過ぎだろうか。

 

だいたい機内に搭乗してからは何かと忙しい。いまや機内は誘惑でいっぱいだ。

 

先ずは電動シートのセッティング確認。

寒いのは嫌いなので自席のともうひとつ隣のシートのブランケットを拝借して、足元と上半身をこっぽり包み込む。

CAが運んでくる
CAはおしぼり、ジュース、ヘッドフォンと次々に運んでくる。
新聞や雑誌も持ってくるからいちいち選ばなくてはならない。

 

これから始まる長い楽しみの時間に備えて、せっせっと自分のセッティングをしている忙しいときであるから、CAのサービスを受け答えするのは戦いでもある。

どっちが客なのか乗務員なのか分からない(笑)

以前のようにテイクオフを楽しんでる暇はない。

 

あの長い滑走路を全力で滑り、浮上する時の感覚。

昔はそれをワクワクしたものだが今はそんなものどうでもよい。

とにかく機乗してからは忙しいのだ。

 

配られた新聞にも一応は目を通さないと気がすまない。

雑誌は後でゆっくり読むとして、先ずは目の前のポケットに差し込まれた免税品マガジンはぜひとも確認しておきたい。

 

どうせフライトの度に何度も見ている同じ内容だろうが、もしや新しいアイテムが記載されてるかもという無理な期待(笑)

 

そして英語で書かれたインドネシアの案内雑誌。これがまた良い。

文章なんて英語で分かりはしないが、珍しい風景の写真や、素敵なヴィラ・リゾートの紹介など妙にワクワクしてしまう。

 

毎回の手順で一通りチェックを済ませた頃に飲み物が運ばれてくる。

ここでも時間を食う作業が強いられる。

 

ビールにするかワインを選ぶかで考えさせられるし、ビールならどの銘柄か、またワインなら赤か白か。

そんな事を考えていると時間がどんどん過ぎていく。

 

程よく2杯目の酒が欲しくなる頃のタイミングで今度は食事が運ばれてくる。

もうこっちのスケジュールはお構いなしに次々と提供されるサービス。

 

いったいいつになったらDVD鑑賞にたどり着けるのか?

機内での食事が終わった頃、新たな邪魔者がやってくる。

 

睡魔だ!

 

この頃には既に3杯か4杯目のアルコールが入っているので、当然やってくる眠気なのかもしれない。

 

しかし普段の生活で昼寝などしたこともないのだが、なぜか飛行機内では事情が違うのか?

隔離された空間、束縛されたスペースでは人間は本能的に眠ろうとするのかも。

 

動くことができない状態ではやる事がないので眠るしかないのなら分かる。

でも僕の場合は違う。

やりたい事がいっぱいあるのにだ。

 

しかしそれでも睡魔に負けていられない。何しろ限られた時間にやりたい事はいっぱいあるのだ。

 

座席ベルトを外しトイレに立つ。先ずはアルコールを身体から出さなくては。

 

無理やりバッグからアイテムを引っ張り出してくる。

ウォークマンのヘッドフォンを耳にかけ、右手にアイ・フォン左手に単行本。

とにかく睡魔を追い払おうと無茶苦茶だ。

 

ヘッドフォンから聞こえる音楽が心地よい。

手にした小説の文字が次第に霞んでくる。

 

...かくしていつもの事ながら深い眠りに陥ってしまうのです(笑)

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